こんにちは、ONE Xのりゅうです。今日は先日、PayPalがPaidyを3000億円で買収したことでも注目を集めたZ世代やミレニアム世代で流行っているBNPL(バイナウペイレイター)の市場について解説をしていきたいと思います。
■そもそもBNPLって何?
Buy now, pay later(=BNPL)は「今購入して、あとで支払う」というサービスです。「クレジットカードの分割払いと何が違うの?」「悪名高きリボ払いの類い?」と警戒感を示される方もいらっしゃるかもしれませんので、ここは解説します。BNPLサービスのメインの仮想敵は「クレジットカード会社のリボ払い」です。ペイパル創業者でBNPLの代表格企業Affirmの創業者でもあるマックス・レブチンは創業当時、下記のように考えていました。
『リーマンショック世代の若者(=ミレニアム世代)はクレジットカードや消費者金融などにを嫌うようになる。また、延滞料や多額の借金が複利で積み上がってしまうリボ払いを嫌悪するようになる。』
上記考えの通り、BNPLのサービスは個人ユーザーのリボ払いのペイン等(≒痛み、辛み)に向き合っています。よって、基本的には個人ユーザーから決済手数料を頂かないモデルになっており、代わりに購入店舗から決済手数料をいただくモデルになっています。個人ユーザーにとっては、支払い手数料や利息請求がないのに、分割して商品を購入することができるわけです。BNPLサービスの個人ユーザーのコアターゲット層は、
・クレカ決済でのリボ払いに疲れた人(米国にとても多い)
・FICOが無いor低いけど支払い能力はある人(移民の大半)
・上記どちらでも無いけどそこそこ高額なもの(100万円以下位)をしっかり計画性を持って購入、返済したい人(ペロトンとかこれです)
上記はりきまるさんツイートの抜粋です。詳しくはりきまるさんのツイートツリーを参照してください。意外と米国には上記ターゲット層は多く、皆さん深いペインを抱えていたようですね。Z世代やミレニアム世代を中心に一気に市場が広がってきています。
法人店舗ユーザーにとっても大きなメリットがあります。彼らにとっては、クレジットカードより支払い手数料が多くなってしまうものの、クレジットカードでは取れなかったSKUレベル(≒どの色のどの品番の商品)の商品情報を含めた購入ログを細やかに把握できるようになること、またミレニアム世代やZ世代といった比較的若い世代にダイレクトにアプローチできることなどを理由に普及が加速してきました。
法人側は小売店の他、メーカーがダイレクトに顧客に販売したい場合にクレジットカードよりも利点が大きいわけです。在宅フィットネス事業を展開するペロトン(ティッカーシンボル:PTON)などはまさにここに目をつけてAffirmとの連携を進めたんですね。
一部では、クレジットカードに比べて、与信審査が甘いという指摘も見られていますが、クレジットカードに比べて利用枠がそもそも小さく、BNPLは利用状況(返済履歴)に基づいて利用限度額が上がっていく設計になっているものが殆どです。数年前には、一部高額商品の支払いができないなどの事象が現れていたようですが、最近は精度も向上し、そのような現象も改善されてきているようです。
基本的な考え方として「BNPLは返済能力があるのに、米国内の旧態依然とした仕組みのせいでお金を貸せなかった人たちを救う」仕組みでもあります。Affirm創業者のマックス・レブチンは社会主義国出身者で、米国に移住してきたときはクレジットスコアが悪く、お金を借りたりすることがなかなかできなかったそうです。そういった原体験をもとにAffirmを創業しています。
$AFRM $SQ 完全に同意見です。 $UPST もそうですが、支払い能力がない人に貸す仕組みではなくて、返済能力があるのに、旧来型の信用スコアのせいで落ちてしまっていた人を救う仕組みと理解しています。各社、なりすましへの対策等もしている印象です。 https://t.co/6meU8xb3gx
— りゅーONE JAPAN/ONE X/塩尻特任CIO (@Ryurku_ore) 2021年8月28日
BNPLのようなサービスは少額購入でも役に立ちますが、Pelotonくらいの1000ドル以上の買い物に効果的です。Affirmは元々Peloton(ティッカーシンボル:PTON)と密な関係にありました。分割購入することで、家計の支出が抑えられて購入できるので、当然個人ユーザーにとっては嬉しいこと極まれり、ですね。
■BNPLの市場規模ってどのくらいなの?
2020年のグローバルXの米国市場予測によると、BNPL市場は2023年で3%の普及予測だったようですが、既に本日時点で3%近いシェアを獲得しているそうです。先日、スクエア(ティッカーシンボル:SQ)が買収を行ったBNPL事業者AfterPayのお膝元でもあるオーストラリアでは、今年時点で普及率10%を超えているようですので、個人的には遅かれ早かれ米国内でも10%の普及が進むのではないかと考えています。今後はクレジットカード市場からのリプレースが進んでいく感じになっていくと思います。現状のクレジット市場が全体の決済市場の30%以上を持っていることを考えると非常に魅力的な市場のようにみえますね。(全てがリプレースされるわけではないと思います)
$AFRM 下記資料読んでましたが、BNPLシフトは当初予測より早く進むかもですね。資料は23年でBNPL3%予測になってますけど、既に3%。BNPL貸倒率は1-2%程度。このリスクをどれだけヘッジできるかが長期的成長のポイントですね。ビジネスモデルに欠陥があるようには見えないです。https://t.co/VthasnodaT pic.twitter.com/Hp6CR2Ra06
— りゅーONE JAPAN/ONE X/塩尻特任CIO (@Ryurku_ore) 2021年8月27日
先日、アマゾンがAffirmと提携して、BNPLを導入していくニュースが発表されまして、Affirmの株価が急騰していましたが、アマゾンのようなEC界の王者が参入してきたらBNPLの決済市場3%→10%(現在の市場規模から3倍以上)はそこまで遠くないのではないかと思っちゃいますね。今後に期待です。
■代表的なBNPLのプレイヤーは?
世界的には米国ではAffirm、オーストラリアではAfterPay、スウェーデンではKlarnaあたりが有名どころですかね。日本だとPaidyという企業がBNPLとして有名なスタートアップ企業で存在しましたが、先日PayPalによる買収発表がありましたね。オーストラリアのAfterPayはツイッターの創業者でもあるジャック・ドーシーが経営するスクエア(ティッカーシンボル:SQ)に買収されました。各社、ちょうど統合化を進めていっている段階かと思います。AffirmはShopfyやAmazonとも提携していて、米国内ではかなり強いポジションを獲得していっている印象です。
■BNPLとUpstartのビジネスモデルって何が違うの?
Twitterでは、BNPLと合わせてUpstartに関する話題もよく出てきますので、そこについても改めて解説をさせて頂きますね。「そもそもUpstartって何者?」という方もいらっしゃると思いますので、解説していきます。
UpstartはAI融資プラットフォームを運営する事業者です。従来、米国ではFICOスコアと呼ばれる与信算定のシステムを使っていたのですが、それの問題として「返済能力がある人であるにも関わらず、返済実績がないなどの理由で、ローンができない」という話がありました。海外駐在者などがクレジットスコア足りなくて、クレジットカード発行ができないという話はよく聞きますよね。
Upstartはこういったところに目をつけて、FICOスコアで救えなかった人たち向けにAIで1500以上教示データから融資可能かどうかを判定するシステムを開発し、顧客に提供するサービスを開発しました。はじめは学生ローンからスタートしたようですが、今は無担保個人向けローン、自動車ローンを展開していっています。主にUpstartが直接個人顧客に融資をするモデル、既存の銀行をパートナーにして個人顧客に提供するモデル、を展開しており、個人的にはFICOスコアに代替する手段になりつつあるとみています。
$UPST Upstart
— モモ@投資ブロガー (@momoblog0214) 2021年8月10日
2021年Q2
⭕️EPS:0.62ドル(予想0.25ドル)
⭕️売上高:1.94億ドル(予想1.58億ドル)
📈売上高成長率:+1,018%
2021年Q3
⭕️売上高:2.05-2.15億ドル(予想1.62億ドル)
2021年通期ガイダンス
⭕️売上高:7.50億ドル(予想6.01億ドル)
📈after+15%
分析記事⬇️https://t.co/zzAhvj4VP9
こちらももさんのツイートを参考に載せさせて頂きますね。Upstartの直近決算はめちゃくちゃ良かったです。Upstartは、Prodigyという自動車ローンを展開する事業者を買収し、自動車ローン市場獲得を急激に進めています。今後は住宅ローンも展開予定であり、大型の融資はUpstartにて進める流れになりそうと見ています。現状はFICOスコアが低い人をターゲットにしていますが、融資リスクが従来モデルよりも精緻に見れるようになっていくので、FICOスコアが比較的高い人にも提供されるサービスになっていくのでは?と予想しています。(ここは、あくまで個人の予想です)
BNPLはクレジットカードのリボ払いを仮想敵にしていましたが、Upstartは高利貸しや従来型のFICOスコアそのものなどを仮想敵にしているようですね。隣接した市場ではあるものの、異なるターゲット層を狙っているようですね。おそらく、BNPLの精度を向上していくためにUpstartのAI融資プラットフォームを活用する事例も今後は増えていくのではと思います。
■今後のBNPL市場ってどうなるの?
私は今後、BNPL市場について与信を緩くしない限りは成長していくとみています。マックス・レブチンはS-1(≒上場目論み書)の中で
消費者の過ちから利益を得る企業の衰退を進める
と言っています。金融リテラシーがなかったことで、リボ払いや債務の山に苦しんでいく人を一人でも多く救っていきたいというレブチンの想いが滲み出ています。今後がBNPL市場が拡大し、リボ払い・債務で苦しむ人がいなくなっていく世界を作っていきたいですね。Upstartのように本来、融資を受けることで新たなチャレンジができる人も増えていくと良いですね。彼らの事業拡大にとても期待しています。
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