ONEX’s blog

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新規事業を量産する熱狂コミュニティの作り方

ヱビナ電化工業様のMETALISMでの講演

新規事業を量産する熱狂コミュニティの作り方

ONE X 濱本隆太

 

こんにちは、ONE Xしゅんです。先日行われたMETALISMでの講演内容をテキストアーカイブさせていただきます。

当日はチェックインから始まり、途中に質問タイムを挟みながら濱本(隆)による講演が行われました。チェックインでは、自己紹介と趣味そして当日の気分や体調を発表する形式で進めました。
それでは本題である、講演の内容に入ります。

 

自己紹介

まず自己紹介として濱本(隆)は現在勤めている総合電機メーカーやONE JAPANコミュニティのCHANGEなど多くの場で新規事業や事業開発に関わってきており、その数は600個以上にもなっています。また、人生の中でほしい部活とかサークルが「なかったら作る」という経験が多く、そういった組織の立ち上げの数は40個にもなっています。そういった新規事業開発や組織の立ち上げに関わってきた経験から熱狂コミュニティを作る上で大事なことを話していきました。

 

3つの原体験

濱本(隆)には3つの原体験があります。

 

1つ目は大学生の頃、トラックに轢かれた話です。その時、いつ死ぬかわからないなと思い、人生は一度きりなのだと悟りました。

 

2つ目は入社した先のパナソニックが潰れかけた時の話です。iPhoneが発売されてから事業部が縮小し、相次ぐリストラなどでショックを受けていた最中、休日にONE Panasonicという有志のイベントに参加したことで、人との出会いで自分の想いに気付き始めたそうです。イノベーティブな事業を創りたいと考えるようになりました。

 

3つ目は、AIデバイスの営業をしていた頃の話です。AIのことを知っていくとAIに自分の営業の仕事をとられるんじゃないか、オペレーションの仕事をとられるかもしれないと思うようになったそうです。今後はイノベーティブな仕事に集中しオペレーティブな仕事は消滅するのではないかと考えるようになり、事業を創る人になるという決意が生れました。

 

シリコンバレーの経験

濱本(隆)はパナソニックの新規事業プログラムでシリコンバレーにいったことがあり、そこで日本企業とシリコンバレーの企業の違いを感じたそうです。日本の企業は独占思考でシリコンバレーの企業はレイヤー思考という点です。SXSWというイベントで注目を浴びたTwitterやAirbnb、Uberなどがその代表例ですが、イベントが拡大するに当たって湧き出た課題を解消するサービスとして生まれ、他の企業とは別レイヤーで勝負することで協業をしているケースが多いというのが特徴です。

 

イノベーションと顧客共創型コミュニティ

イノベーション

次にイノベーションと顧客共創型コミュニティについて解説しました。イノベーション企業としてGAFAが強い理由は大きく分けて2つあります。

 

  • ネットワーク効果
  • アップデート

 

まずネットワーク効果について説明すると、ユーザー数やコンテンツ数が増えれば増えるほどサービスの価値が高まるものがその例です。

 

次にアップデートについて見ていくと、強い企業はアップデートを回す速度が早く、アップデートをしやすい仕組み作りがされています。その一例がテスラです。テスラは最初に売り出した車でもソフトウェアのアップデートにより機能を後から追加できるような工夫がされています。また、Amazonなどでも同じく、アップデートにより日々UIを少しずつ変えることでユーザーの体験に寄り添ったサービスの提供を行っています。

 

また、GAFAから学べるビジネスモデルの特徴として、プラットフォームであるという点です。それ以前はバリューチェーンのビジネスモデルが一般的だったのがGAFAの出現とともにプラットフォームのビジネスモデルに変わってきました。プラットフォームの特徴は3点あります。

 

  • 顧客やサービスの数
  • 継続利用の仕組み
  • 2、3社が優位になると独占になる

 

顧客共創型コミュニティ

濱本(隆)は近年のデジタルサービスの流れを見て、これからは顧客共創PFの時代に突入すると考えています。今まではリーンスタートアップ1.0としてデザイン思考型事業開発が主流だったのですが、これからはリーンスタートアップ2.0として顧客共創型事業開発へ移行していくとのことです。その事例として、slackやdiscord、redditなどのアプリが挙げられます。

 

濱本(隆)自身も伴走支援するプロジェクトで、顧客共創型コミュニティの実現をしています。塩尻CxO Labやシン・シゴト服ラボ、大田区SDGs副業、そしてCHANGE。こういった顧客共創型コミュニティの実現をしていく中で、良い顧客共創型コミュニティには共通項があることがわかったそうです。

 

イシューから入ると盛り上がらないのです。だから、次の関係人口醸成サイクルを回すことで良い顧客共創型コミュニティになるとのことです。

 

  1. 好きの醸成
  2. 関わりの濃密化
  3. 課題への対峙
  4. 解決策の実行

 

そのコミュニティが好きだからこそ仲間同士で熱狂しあい、サービスの改善スピードが爆発的に上がるのです。一番大事なのは熱狂することです。

 

顧客共創型コミュニティの必要条件

顧客共創型コミュニティには3つの必要条件があると濱本(隆)は言います。

 

  • 好きの醸成
  • DOER
  • コミュニティマネジメントの機能

 

順番に見ていきましょう。まず顧客共創型コミュニティの一番重要な最初のフェーズである「好きの醸成」が大事なのですが、ここで気をつけないといけないのはある共通の価値観の人を集めることです。その人たちが敬遠するようなタイプの人を混ぜないことが大事です。

 

次にDOERです。DOERのマインドセットとスキルセットを持っている人が必要条件です。逆に、インプット思考で何もギブしない人がいるとコミュニティ運営によくないので、そこに気をつけましょう。

 

最後にコミュニティマネージャーの機能です。コミュニティのフェーズごとに必要な役割が変わりますが、このコミュニティマネージャーは必要条件です。

 

質問タイム

ここで一度質問タイムを挟みました。

 

Q.DOERのマインドセットはどのように体系化したのか

A.ONE JAPANの行うCHANGEという新規事業プログラムの運営をやっていく中でCHANGEが掲げるDOERの理想の人物像を細分化することで言語化したのがこのマインドセットです。

 

Q.一緒にやろうってなるきっかけはどうやってるのか。

A.基本飲みの席が多いです。

 

Q.一緒にやりたいと思う人を最初に決めるのはどうやっているのか。

A.軽く一緒にやってみて一緒に走ってくれそうな人だったらやって、全然一緒に走ってくれない人とはやらないです。

 

ここから講演の後半になります。

 

企業内の3つの罠

濱本(隆)自身社内外含めて大企業を中心とした社内外新規事業に600件ほど関わってきたそうですが、その中で大企業が陥りやすい罠が3パターンあることに気づきました。

 

1つ目はPL思考の罠。2つ目は既存勢力の罠。3つ目は熱量の罠。順に詳しく見ていきましょう。

 

PL思考の罠

まず1つ目の「PL思考の罠」について見ていきます。日本企業の経営陣は黒字となることに注目し、利益で回収することを目標とするため長期投資だと考えてしまいがちです。それに対して、スタートアップ投資家は時価総額で考えるため、時価総額が上がりそうな銘柄は短期投資銘柄として見ることができ、投資が進みます。こういった投資意識の違いが大企業とスタートアップにはあり、大企業から新規事業が生まれにくい原因にもなっています。

この罠に対する心得は、「本気で大企業で新規事業をやるなら売却時の時価総額で評価してもらいながら必要なタイミングで突っ込んだ投資をしてもらうこと」です。また、一部を外部(資本関係外)に出すのも一つの手法です。資本関係があることで自らのルールに首を絞められる事態があるため、一部に出すことでそれを克服することができます。

 

既存勢力の罠

次に2つ目の「既存勢力の罠」について見ていきます。新規事業をやっていく中で既存事業等に不都合な事実が浮かび上がってくると総攻撃にあってしまうことがあります。

 

熱量の罠

最後に3つ目の「熱量の罠」について見ていきます。大企業には熱量がない人が潜んでいます。大企業の社内起業家はまあまあ熱量を持っていますが、中間層がストッパーとなり熱量が下がりやすい状態に陥っています。それに対して、スタートアップ企業は起業家はもちろん物凄い熱量を持っていますし、VCも熱い人ばかりですから熱量が上がりやすい状態になります。

 

三つの罠の処方箋

これらの大企業三つの罠には処方箋があります。それは既存のアセットを生かして、外部を活用することだそうです。詳細は別の機会にて。

 

ハードウェア事業の罠

ハードウェア事業の罠も3つあります。

1つ目はプロダクトアウトの罠。2つ目は外注思考の罠。3つ目は量産化の罠。順に詳しく見ていきましょう。

 

プロダクトアウトの罠

1つ目の「プロダクトアウトの罠」について見ていきます。ハードウェア企業がよくやってしまうケースがこれで、顧客発見や課題発見のフェーズを飛ばして自社の技術を追求してしまうケースです。

 

外注思考の罠

2つ目の「外注思考の罠」について見ていきます。外注思考によりコスト感がわかってない状態でミスを起こしてしまうケースがこれです。

 

量産化の罠

3つ目の「量産化の罠」について見ていきます。濱本(隆)自身の例で、想定していた顧客が全然いないのに量産化をしてしまい赤字を出してしまったという体験談が印象的でした。

 

今回の講演を終えての筆者の所感

今回の講演で印象的に感じたのは、コミュニティのDOERの存在とハードウェア事業の罠です。コミュニティ運営をしていく上で関わってくる人の存在がそのコミュニティに直結してしまうけれど、人はコントロールしにくい存在であるため、その辺りの調整が大事なのだと考えました。

 

もう一つのハードウェア事業の罠については、ソフトウェア事業にはないハードウェア事業ならではの罠だと感じました。物を作るだけで物自体にコストが最初に発生してしまうハードウェア事業はやはり小さく始めて、顧客の課題に沿っているか反応を見ていくのが大事だと感じました。その解決策としてクラウドファンディングは非常に有効だと考えました。

 

ライター:濱本舜也