ONEX’s blog

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AND ON主催セミナー「大企業イノベーションの課題と解決策」に参加してみた

こんにちは、ONE Xのしゅんです。本日は6月9日に行ったAND ONでの講演内容について特に印象に残ったポイントをテキストアーカイブとしていこうと思います。


18:30-19:00 大企業イノベーションの課題と解決策

個人の原体験

濱本(隆)は3つの原体験があると言っていました。

 

1つ目は大学生の頃、トラックに轢かれた話です。その時、いつ死ぬかわからないなと思い、人生は一度きりなのだと悟ったそうです。

 

2つ目は入社した先のパナソニックが潰れかけた時の話です。iPhoneが発売されてから事業部が縮小し、相次ぐリストラなどでショックを受けていた最中、休日にONE Panasonicという有志のイベントに参加したことで、人との出会いで自分の想いに気付き始めたそうです。イノベーティブな事業を創りたいと考えるようになったそうです。

 

3つ目は、AIデバイスの営業をしていた頃の話です。AIのことを知っていくとAIに自分の営業の仕事をとられるんじゃないか、オペレーションの仕事をとられるかもしれないと思うようになったそうです。今後はイノベーティブな仕事に集中しオペレーティブな仕事は消滅するのではないかと考えるようになり、事業を創る人になるという決意が生れたそうです。

 

なぜCHANGE by ONE JAPANを作ったのか?

CHANGEを作った理由は、大企業から新規事業を産むためのスキルやノウハウがそれまで体系化されていなかったからだそうです。

濱本(隆)は、大企業新規事業の実践者コミュニティの「ONE JAPAN」に飛び込み、自分のキャリアをアップデートしようと考えました。そして、経済産業省が主催する「始動」というプログラムにも参加しました。こういった取り組みが社内に伝わり、新規事業部へ移動することになりました。

 

しかし、始動プログラムで学んだアントレプレナーの内容が大企業には通用しない事実に直面し、そこで初めて大企業から新規事業を産むためのスキルやノウハウが体系化されていないことに気づいたそうです。

 

そういった経緯から、「大企業から世の中を変革する」という想いのもと始まったのが大企業挑戦者支援プログラム「CHANGE by ONE JAPAN」だそうです。

 

CHANGEでは、スタートアップの側面を表すTシャツの部分と大企業の側面を表すスーツの部分の使い分けを体系的に学べるようになっています。そしてこれまでの2年間で200名以上のCHANGERを創出してきました。この仲間たちと共に8年後に毎年1万人のCHANGERを創出することを実現していきます。

 

また、パナソニック版CHANGEの「BOOST」も作ったそうです。現状の問題意識としてイントレプレナーが増えてこないという現実がありました。boostでは社員のwillを醸成し、市場・課題をシャープにするというアプローチをとっています。社内外経営者幹部も巻き込んでおり、国内従業員の3.5%を巻き込みました。その結果、入社時に比べて明らかに新規事業を増加させることができたそうです。

 

大企業イノベーションの3つの罠

濱本さん自身社内外含めて大企業を中心とした社内外新規事業に600件ほど関わってきたそうですが、その中で大企業が陥りやすい罠が3パターンあることに気づきました。

一つ目はPL思考の罠。二つ目は既存勢力の罠。三つ目は熱量の罠。順に詳しく見ていきましょう。

PL思考の罠

まず一つ目の「PL思考の罠」について見ていきます。日本企業の経営陣は黒字となることに注目し、利益で回収することを目標とするため長期投資だと考えてしまいがちです。それに対して、スタートアップ投資家は時価総額で考えるため、時価総額が上がりそうな銘柄は短期投資銘柄として見ることができ、投資が進みます。こういった投資意識の違いが大企業とスタートアップにはあり、大企業から新規事業が生まれにくい原因にもなっています。

 

この罠に対する心得は、「本気で大企業で新規事業をやるなら売却時の時価総額で評価してもらいながら必要なタイミングで突っ込んだ投資をしてもらうこと」です。また、一部を外部(資本関係外)に出すのも一つの手法です。資本関係があることで自らのルールに首を絞められる事態があるため、一部に出すことでそれを克服することができます。

既存勢力の罠

次に二つ目の「既存勢力の罠」について見ていきます。新規事業をやっていく中で既存事業等に不都合な事実が浮かび上がってくると総攻撃にあってしまうことがあります。

 

熱量の罠

最後に三つ目の「熱量の罠」について見ていきます。大企業には熱量がない人が潜んでいます。大企業の社内起業家はまあまあ熱量を持っていますが、中間層がストッパーとなり熱量が下がりやすい状態に陥っています。それに対して、スタートアップ企業は起業家はもちろん物凄い熱量を持っていますし、VCも熱い人ばかりですから熱量が上がりやすい状態になります。

三つの罠の処方箋

これらの大企業三つの罠には処方箋があります。それは既存のアセットを生かして、外部を活用することだそうです。詳しくはCHANGEプログラムで解説されるそうです。

 

これからは顧客共創の時代

濱本(隆)は近年のデジタルサービスの流れを見て、これからは顧客共創PFの時代に突入すると考えています。今まではリーンスタートアップ1.0としてデザイン思考型事業開発が主流だったのですが、これからはリーンスタートアップ2.0として顧客共創型事業開発へ移行していくとのことです。その事例として、slackやdiscord、redditなどのアプリが挙げられます。

 

濱本(隆)自身も伴走支援するプロジェクトで、顧客共創型コミュニティの実現をしています。塩尻CxO Labやシン・シゴト服ラボ、大田区SDGs副業、そしてCHANGE。こういった顧客共創型コミュニティの実現をしていく中で、良い顧客共創型コミュニティには共通項があることがわかったそうです。

 

それは次の関係人口醸成サイクルを回すことで良い顧客共創型コミュニティになるとのことです。

  1. 好きの醸成
  2. 関わりの濃密化
  3. 課題への対峙
  4. 解決策の実行

 

逆に失敗パターンもあるそうです。それは課題から入るパターンです。

そのコミュニティが好きだからこそ仲間同士で熱狂しあい、サービスの改善スピードが爆発的に上がるのです。一番大事なのは熱狂することです。

 

まとめ

今回の濱本さんのお話で、大企業イノベーションを起こすには次の3つを行動に落とし込むことが重要ということです。

  • 大企業の罠を避ける
  • 熱狂するコミュニティを活用する
  • 顧客共創でイノベーションを加速する

また、このイベント会場であるコワーキングスペースのANDONも顧客共創型コミュニティなので、どんどん活用しまくろうとのことでした。

 

筆者の所感

筆者として考えたことは三点あります。

 

まず一つ目はCHANGEについてです。新規事業のプログラムは多く存在しますが、CHANGEがそれらと異なる点は社内起業家という大企業のアセットを生かした起業方法のスキルやノウハウが得られるという点です。濱本(隆)がおっしゃっていたTシャツとスーツの使い分けをし、どちらの性質も上手く理解しながら新規事業をする方法が学べるという点で凄く魅力的だと思いました。

 

次に二つ目の大企業の罠についてです。大企業って新規事業やるには身動きが取りづらいからスタートアップに必要なスピードが出せずに、熱が冷め、新規事業が生まれないという悪循環があると思うのですが、それをどう回避すればいいのかを説明してくれたのは非常に大きいと思っております。

 

そして三つ目の顧客共創型コミュニティについてです。濱本(隆)自身の事業支援や伴走経験から体系化した顧客共創型コミュニティというのは非常に説得力のあるもので、確かに課題から考えてしまうと課題山積みの状態になってそのコミュニティが持っているバリューが見えづらくなる傾向があるように思います。この好きの醸成を先にアプローチしそこのコミュニティにハマることで、課題からアプローチするときには見えなかったものが見えるようになるということは確かにあると思います。その好きの醸成具合が循環サイクルのエネルギー源になるので、熱量が重要になってくるというのは非常に腑に落ちました。

 

19:00-19:30 パネルディスカッション「大企業オープンイノベーション座談会」

KEIKYU 坂巻康治さん

CHANGE by ONE JAPAN 濱本隆太

TOYOTA CONIQ Pro 岩岡宏樹さん

ReGACY Innovation Group 金子佳市さん(ファシリテーター)

 

8つのワードでトークをしていきます。

夢について

金子さん「WILL 皆さんの夢は?」

 

坂巻さん「濱本さんの講演が刺さりまくりました。よく課題から考えがちだけど好きなことから考えるといいってことに腹落ちをしました。うちの沿線が好きだし、元気のない姿を見ていたくないなと考えています。前職で地方でガイドブックを作る仕事をやっていた時もその街が好きになったら良い記事ができてっていう良い循環があったのを思い出しました。だから、自分が今仕事している京急線という沿線が好きになって、いい思いをさせてあげたくて、そういうのがきっと自分にも返ってくるんじゃないかと思っています。」

 

岩岡さん「元々広告会社ということがあるので、生活者発想とか心を動かすという想いから、ワクワクするようなビジネスをやっていきたいと考えています。」

 

スタートアップと大企業の関わり方

金子さん「CONIQさんってスタートアップの方と上手に共創しているなという印象があるのですが、スタートアップとの関わり方はどのようにしているのでしょうか。」

 

岩岡さん「事業を開発する上で、凄く尊敬する存在であると考えていて、ライバルというよりパートナーというスタンスで常に考えています。」

 

金子さん「大企業とスタートアップの違いって文化で言うと何だと思いますか。」

 

濱本(隆)「スタートアップは圧倒的なスピードですね。大企業は圧倒的なアセットがあってそこが強みですね。実際スタートアップはガバナンスをやられることが多いけど、その辺は大企業はしっかりしているのでそこは強みですね。」

 

金子さん「夢についても聞いていいですか。」

 

濱本(隆)「二つあって、一つは半径5メートルぐらいの人を幸せにしたいです。もう一つは世界一のイノベーションを起こしたいですね。」

 

金子さん「ありがとうございます。半径5m以内というのが凄く響きました。実は私元々パナソニックの地方の工場で働いているときに濱本さんに引っ張っていただいて新規事業の道に進みました。」

 

地域ごとのイノベーションに差はあるのか?

 

金子さん「私自身の原体験もそこですし地域によっても凄くイノベーションの差が大きいなって感じていて、本質的にイノベーションの違いがあるんじゃないかと考えているんですけど、花巻さんどうですか。」

 

花巻さん「同じ沿線でも全然違いますね。横浜でも三浦でも。その地域なりにスタートアップとの関わり方や考え方も違いますね。」

 

岩岡さん「街一番で、街単位で捉えている考え方があります。地域と大企業の想いが重なった時にイノベーションが進むんだろうなって気がします。」

 

大企業の課題

 

濱本(隆)「パナソニックという観点で言うと、コングロマリットディスカウントです。やってない領域とかがある方が逆にやりやすいというのがあるかもしれないです。アセットにもなる部分もあればデメリットにもなりますので。」

 

花巻さん「元々鉄道会社って文化としてクリエイティブではないので。とはいえ仲間なので社員同士の距離が近いからこそ、話せば理解してくれることが多い気がします。」

 

岩岡さん「マーケティングのセクションが24セクションあって、ビジネスをしているところも同じぐらいあリました。課題とかアイデアとかそれぞれが考えていることがあると思うんですけど、多分被ってることもあると思うんですね。だから、ニーズとシーズのマッチングが上手くいくとイノベーションが上手くいくと気がしますね。」

 

コミュニティへの期待

 

濱本(隆)「メッセージは変わらず熱狂から面白い事業が生まれると思っております。キャンプ好きなんですけど焚き火って木の距離間が大事で、コミュニティもそれと一緒だと思うんですよね。」

 

ANDONへの期待

 

岩岡さん「二つあって、一つはこの熱量を会社に戻していきたいです。もう一つは現状としてスタートアップと出会える場所って増えたと思うんですけど、そこと大企業とが繋がれる場所はここの特徴だと思います。」

 

花巻さん「熱を冷ましてはいけないと思っていて、そのブースターとしてありたいですね。ANDONはドアだと思っていて使いたいなと思うスタートアップさんがいたらぜひこのドアをノックしてもらいたいです。」

 

パネルディスカッション後の筆者の所感

 

パネルディスカッションを聞いて、スタートアップにはスタートアップの良い部分があって、大企業には大企業の良い部分があって、完全に別になるのではなく良い関係性を築くことで、新たな面白い事業が生まれるのではないかと考えました。またイノベーションの地域差があるとおっしゃっていましたが、案外既存の権力関係が何もない街の方がイノベーションが起きやすかったりするし、現在イノベーションが起きていない街でも熱量が集まることでイノベーションの街に生まれ変わることができる可能性を秘めているのではないかと考えました。

 

ライター:濱本舜也